以前より多方面から要望の有った東京進出計画が机上の議題となり私は遂にゴーサインを出した。
平成19年6月17日の事である。私は決してこの進出に賛成ではなかった。
最高責任者である私にとって心の奥底に納得できない自分がいた。
何年も前からの進出案を握り潰してきた一つの理由によってである。
どうして東京のショットバーのバーテンさんがわざわざ飲みに来るのか?では、ショットバーのお客はブルーラベルが扱っている酒すら知らない人があまりにたくさんいる証拠ではないのか?例は悪いかもしれないが未開の国の先住民の方々に、コンビューターを売るのと同じではなかろうか?
静岡店が経験した月日をかけ、一からお客様に酒を教えていかなければならないのか?
ブルーラベルの酒は一応東京中心に発売されたものばかりである。
当店の酒を知っていて当たり前なのだが・・・・・・
しかしスタッフは出荷の準備を3ヵ月かけ、3,000本の酒を送出した。第一陣の酒である。
20年以上眠っていた酒がやっと日の目を見る時だったのだろうが全ての運送会社、引っ越しセンターから断られた。
自分で運ぶ以外にない。元大型トラック運転経験者が名乗り出た。
〝よし、二人で運ぼう。全部割れても俺の責任だから気楽に行け〟そして、10月の深夜の銀座に1本の破損もなく運んだ。
現地待機スタッフとで2時間で収納した。全員苦しくても楽しそうにやっていたが私にはこの銀座は “男と女の一夜の逢瀬の街、酒は二の次の街„ 今度の戦は泥沼の闘いになるだろう。
同じ酒を持っていない人達よりのやっかみ、誹謗中傷、口に合う合わないは別としてその酒の持っている価値を知らない人は“高い„と云うだろうし、判っている人は“安い、儲ける気があるのか„と言うに決っている。
周囲の人達はブルーラベルが開店になる事を望んでいるだろう。
邪道と云われるかもしれないが私流のやり方でやるつもりだ。
“1軒のショットバーが酒の文化を変える事も有る”この精神だけは貫きたい。
銀座には数多くの名店がある。カクテルを研究し、高齢になっても燦然と輝いている名バーテンダーの人達は私にとって尊敬に値する。
立派と云わざるをえない。その店に来るお客様を魅了してやまないそういうバーテンダーの方々が少しづつ減ってゆくのは悲しい。
遂にその日がきた。平成19年11月26日オープンの日である。
私はスタッフに5点の事を要望し、命令した。
1.値段を明確に表示
2.バーテンダーの機嫌を取りながらお客が酒を飲まなければならないような雰囲気を作るな。お金を払ってバーテンの顔色を伺いながら酒を飲む位バカげた事はない。先代のマスターから受け継いだ悪い風習である。
3.手は何回でも洗え。何の商売でも同じ事。
4.徹底したサービスをやれ。我々サービス業とは云いながらお客様に満足なサービスをしている店がどれ位少ないか。気持ちよくお客様に帰ってもらえ。あとはそのお客様がリターンして来るかそれが勝負だ。
5.高い酒を勧めるな。安い酒から勧めてお客様の好みの酒を見つけてもらえ。
判らなければ教えてあげろ。
当店の一番高い酒はボウモア バイセンテナリーの15,000円が最高である。
これが高いか安いか少しお酒を知っている人なら、すぐお判りでしょう。
たくさんあるお酒飲む飲まないは自由である。
1,500円〜2,000円位で旨い酒もたくさん有ります。
但し、添加物の入っている酒が本物かの違いだけは説明する事。
当店の酒は絶対に悪酔いしないと断言できる事を証明させる事。
平成20年8月現在、お客様のユーターン率は90%近くになっている。
平均単価10,000円位。
何かが気に入って下さったのだろう、この繰り返しを続けるのみ。
私はこの闘いを意義の有るものだと思っている。スコットランドを始め世界中の
酒造りの職人が魂と引き替えに作った“世界遺産”である。
多くの人々に飲んで欲しいから作ったお酒達。良い悪いは別として。
ブルーラベルのような店はもう二度と出てこないと思う。
絶対に成功させなければならない。スタッフも20年、30年勤続の者が多い。
人生と青春をこの店に捧げた者達の為にも・・・・・・・・
不正を働いたとはいえブルーラベルで働いてくれて解雇になった人達の苦労にも報いなければならない。
私の人生最後の大一番、果して・・・・・・
追・・・ 土曜日がヒマで困っています。この日ご来店のお客様には
バーボン・・・・エバンウィリアムス 23年オールドボトル フルショッ卜
ブランデ一・・・ジャンフィユトレビュ グランドシャンパーニュ フルショッ卜
ウイスキー・・・マッカラン レッドラベル フルショット/ダイリューエン ジャグ フルショット どちらか1杯
サービス致しております 10月末迄