Owners Voice 琥珀色の迷宮

スコッチ文化を支えた男達と私を叱った男…琥珀色の迷宮No.11

最近、酒屋の店頭に並ぶ酒の質の悪い事は酒の達人と云われた男は元より酒好きの愛好家までが口にするようになった。世界の経済情勢なのか。

スコットランド人の毅然とした姿勢の欠落か。

いずれにせよ、決して旨くないマズい!

世界の酒をリードしてきたスコッチウイスキー。各蒸留所が全力を上げて造り出した銘酒と名声、その蒸留所の名前をラベルにうたうならその名に恥じない様な酒を造り、世に送り出す事である。

“これで良し„として買う輸入元が“NO„を思い切って出せば、必ず良質の酒が出てくる。日本へは何を出しでも売れる。

日本人を甘く見るな。

最近TV を見た中で不法入国のタイの女性達。余程日本が良く見えるらしい。

“女の浅知恵”と云ってしまえばそれまでだが多額の借金をしての不法入国。

それを受け入れる日本人。女を喰い物にしているこの国を彼女達はどう見ているか。

これも酒とは異質であるが“日本人を善人と見るな„そういう女性達と接する機会が無いが、日本人として一言云いたい“申し訳ない„と・・・・・そして早く無事に帰りなさいと。

話は横道にそれましたがウイスキーの文化を守り続けている人達もたくさん東京にはいる。

目白の田中屋の栗林。この人に接した男は酒に対しての品格と人格まで変えてしまう。

私がこの世で一番嫌いな男である。いくら努力しても常に、はるか上を行っている。

どうしても追いつけない。新しく酒を覚えるならそして、飲む酒に迷ったらこの男に会ってみなさい。決して損はない。

人間の生き方の道しるべみたいな人である。一説によるとロマノレイビーの魂まで奪った男らしい。

クレインのマスターも素靖らしい。一つの哲学を持っている。

グレースのマスター早く直って欲しい。ウイスキー界のみならず酒の世界の重鎮である。元ウイズの和知さんも会いたい人の一人である。

そして別の分野での御意見番は小学館の山岡氏である。

口は悪い、敵も多い。しかし静かに話していると彼もウイスキーの心を大切にしている人間である。

貴重なキャラクターではあるが親切ていねいに教えてあげれば長生き出来るタイプ。

宝の持ち腐れにならないように祈る・・・・・・

前述に登場した人達は酒の文化を支えてきた人達だが全く異分野でブルーラベルを支えてくれた男の物語がある。

私が東京に出店して着陸したのが銀座であった。この街は“馬がトコロ天を喰っている街”だと思っていたがその逆で、トコロ天が馬を喰っていた街であった。

酒に詳しい街かと思えば男は女の全てを知り、女は男の財布の万札の数まで知っている街であるが、酒は全く知らない街なのにはびっくりした。

どんなに旨くても必ず水割り、アルコール度数20°にしなければ飲めなかった。

そして〝この世で最高のウイスキーはロイヤルサルートだ〟と云った時、網走でも行ってショットバーをやるかと思って大笑い。

このままでは従業員の神経が参ってしまう。私も63才になる。

ーから教えて営業するなら銀座を離れ、移転しようという意見が大勢を占めたが他の場所へ移っても同じではないかという気持もあった。

来て下さるお客は大半が静岡の客であった。これで金銭的には随分助かったのが現状であった。

しかし、銀座に来る人達の中に私の心を決定的に移転の方向に決心させた事件が起きた。

エレベーターを降りて4Fの私の店のトイレに二人の男が駆け込んで男女トイレに入り、ゲロを吐いてそのまま帰ったのである。

ブルーラベルの歴史の中で初めての事が3回も起きた。2回は従業員から聞いた話だが嘘とは思えない。

しかし3回目の客は私が東京店に来ている時に起った。トイレを使ってそのまま帰ろうとした時“あまりにも非常識ではないですか„と云うと“金が欲しいなら金を払うぞ„といった時、“私が金を払って貴男の顔を便器に沈めてやるよ„と云ってやったがそのまま帰した。

田舎者の集合体が東京であると痛感したが本物の東京人はお年寄りの男女が格好いい服装で堂々と歩き、白髪に帽子、スカーフと立派な靴、見事に絵になっている。

素晴らしい昼の銀座は・・・・

しかし私は管理事務所へ移転の報告を出した。

そしてオーナーである会社の部長がやってきた。開口一番“天下のブルーラベルがこの街を出て行くのですか。こんな男と女の世界の中に正統派のショットバーが有る事はある意味で銀座の顔ではないのか?„何回か店に飲みに来て下さったその男の顔とは全く違っていた。

実は極秘の内にある業者に2ヵ所銀座の臭いのしない所を探させていた。

2ヵ所とも良い場所なら同時に2ヵ所オープンも可能であったが“もう一度考え直してやって下さい。確かに家賃も高額だが一銭もまけない„と云ってきた。

家賃をまけて欲しくて駆け引きしている訳ではない。

しかしこの男のしゃべり方、ふところの狭さと広さを同時に備え持つこの男が私は以前から好きであった。

私の人生も修羅場の連続を乗り越えて今日まで来たがその私に屈する事なく、堂々としゃべる。ものすごく旨い酒に出会った様な壮快感を人に与える“株式会社コンチェルト取締役江口隆光”私はこの男の事は一生忘れないだろう。

今後ビジネスの上で剣を交える事が在っても。憎しみもない立ち回りならこれ位楽しい事はないだろう。

その月から急に売上が増え始めたのは偶然か?・・・・・

自分が生きてきた波長に合った唯一の男である。

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