Owners Voice 琥珀色の迷宮

愛すべき仲間達…琥珀色の迷宮No.18


ブルーラベル1号店が誕生して24年が来るが現在のメンバー程素晴らしい者達はいない。

過去の人達と比べて雲泥の差がある。何と云っても信用出来る。

バーテンは酒を売るのが目的かも知れないが単に笑顔で売っても何にもならない。

お客様が心から喜ぶ気持ちになった時初めて自分も笑顔になれる。

“選んであげてよかった„“気に入って下さって良かった„その時の自分の心のときめきが最高の瞬間である。


それに気付いた若き20才のバーテン二人。共に女性である。

最初採用する時は少しためらったが私はこの二人を見て新しい波を感じた。

しっかりしている、素直であり、その反面気が強い部分も適度に持ち合わせている。

客との間に変な関係も無いし、お客様が出した酒を旨そうに飲んでいても“納得出来ない„本当にあの酒で良かったのかと考える様になった。

もう我々年寄りの出る時代ではない。軽く補佐してやる位で充分だ。

二人の店長の指導もうまくなった。銀座店も入れると三人の店長は私に何十回ビンタを張られた事だろう。

気が抜けていると自分で判った時は“社長殴って下さい„と云って来る者もいるがやる気の表れであろう。

男女の仲を越えたチームワークは素晴らしい。もう10年若かったら私自身もっと楽しい人生だったと思う。全員私の孫の様な若者達である。

東京銀座店も店長を中心に良くまとまっている。まるで兄弟の様な間柄である。

不正も無く、客には正直で、ボッタクリもやらない。金銭感覚もしっかりしている。

店長の鷲山が少し老いてきた。もうすぐ引退か?生きて恥をさらすより、死んで花を咲かせろと云いたい位年をとった。あと5年もすれば引退か・・・・・・。

髪はうすくなり、目は悪くなり、どうしようもない。残っているのは私の絶大な信用だけだろう。30年勤続のお礼に老人ホームを捜してやるか?

当店での最大の課題は、店内のメンバーは若い、しかし後方支援の物資運びと酒を倉庫から探し、締麗に酒を掃除して準備をする連中が勤続30年以上の者が多い。

私もその一人であるが、この者達の将来も考えてやらなければならないだろう。

色々と公私に渉り問題が起きてくるのには少し疲れた。病人もたくさん出てくる。

私より若い人達が一人前に病気になんかなりやがって俺より先に死んで行く。

俺だけ置き去りにして先にゆくなよ。片腕と云われた人間が何人死んだか。

つい最近死んだ奴は食道ガンであった。死ぬ間際に彼は“社長と二人にしてくれ„と奥さんと私 の連れにもそう云った。

“全員出てろ„と云って二人切りになった時“社長先に行きますが申し訳有りません„“先に待ってろすぐ逝くから„彼は“社長と2週間前に食べたソバは旨かった„三分のーもよう食べれなかったのに・・・・・・

“福井県のうるめいわしはおいしかったですね。そして最後に頼みがあります。

二人でタバコを吸いませんか„病室が禁煙と判っていても“よし、吸おう„と2本火をつけて吸っている時に看護婦が入って来て“ここは禁煙ですよ„と大声で怒鳴った。

私は一言だけ云った“死に逝く者の最後の頼みも聞いてやれないのか。出てゆけ„

何の騒ぎも無く彼は間もなく死んで逝った。

私は幸せ者である。死んで逝く者、生きて後の人生を生きて行く者、大勢に囲まれている。

死者は言う“社長早く来て下さいよ„生者は言う“ずっと長生きして下さい„天命には逆らえないと云うが少し逆らってやるか・・・・・・

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