Owners Voice 琥珀色の迷宮

誰かがやらねば…琥珀色の迷宮No.1

16年前、静岡市の一角で生まれた “Blue Label” 当初は2,000種の酒でスタートした。

周囲の老舗と云われるショットバーのマスタ一連中から三ヵ月でつぶれると言われたものだ。
私にとっても大いなる賭けで有った。

“通常どこにでもある酒がない” “高い” “酒が甘くない” 散々たたかれたものである。

看板はこわされ、落書きはされ、部下達の心痛を考えると辛いものがあった。

私がスタッフに言った言葉は「俺を信じろ! ヒマだったら掃除をやれ。
終ったら酒を飲め。腹がすいたら寿司でも注文して食べろ。その内、酒も寿司も口にするヒマもない位に客が来る。じっと何ヵ月でも待て・・・・」

何ヵ月か後に、1人2人と以前毒ついた客が恥ずかしそうに帰ってきた。
開口一番「この店がどれ位素晴らしいかよく判った。今までの店の酒が全く飲めなくなった。
あの日飲んだ酒が翌日二日酔いにならなくて目覚めが最高に良かった。
帰ってきた私が女房に「今日は酒臭くないね」と云われた時 “Blue Label” の酒とはこれかと思った瞬間、
ものすごくカルチャーショックにおちいった。
医者である私が恥ずかしい言葉を吐いたのでもっと早く来たかったがどうしても来れなかった。
今は思い切って改めて飲ましてもらう。ここの酒は絶対に安い!」

この言葉を聞いたスタッフが生き返ったのはこの時からだった。

その後は満席の日々が続いた。知人が私に聞く「チェックしたお客が何故、社長の所まで来て握手して帰るのか?」

「いいや私にではなく、本当に旨い酒に出会った感動がそうさせるんだヨ。」

開店して1年たった頃の話である。

その頃からである。酒を盗み、売上の金をごまかすスタッフが現われた。

5人のスタッフの内、4人がやっていた。即、首にした。
残ったのは只、1人不正とは全く縁の無い現在東京店ホールマネージャーの鷲山である。

私と2人だけで満席の客をこなしていった。しかし、私の悪運は未だ生きていた。

お客様の中よりバーテンになりたいと云う人達が続々と現われた。
現在のスタッフは全員元お客様である。

全てに於いて信用できる人間ばかりである。
今も静岡店のトイレには開店当初、頭にきた客がこぶしでたたいた後が2ヶ所大きくあながあいている。
“Blue Label”の正にメモリアルホールである。

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